9月です、涼しくなってきました。秋の訪れを感じる今日この頃です。
そろそろ行楽シーズンですね。みなさんも紅葉を狩りにいったり、ぶどうを狩りにいったり、りんごを狩りにいったり、あるいはモンスターを狩りにいったりする予定があるのではないでしょうか? かくいう私も三連休にひと狩りいくのですが、そのときは旅館で一泊してのんびりする予定です。
旅館といえば温泉や大浴場がセットになっているといっても過言ではありませんよね。四季折々の景観を眺めながら露天風呂で体の芯まで温まる、温泉の醍醐味です。
と、いうことで行楽シーズンを控えた今回は、公衆浴場とレジオネラ菌の話をしようと思います。
前回のユーアイ塾ではプールの塩素についてお話しました。塩素投与の目的や適切な保存方法、プールヶ原の戦いなどをサラッと撫でた感じです。レジオネラ菌についてもスラッと出てきたと思います。→前回記事へのリンク
今回ははじめにそのレジオネラ菌についてもう少し詳しくお話しましょう。
レジオネラ菌のプロフィール
「バイオフィルムがある限り、オレたちは無敵だぜ」
名前:レジオネラ
生息地:土壌や河川、沼、空調設備、入浴施設の循環装置などマルチに活動
アメーバなどの原虫の細胞内に寄生して生活している
適正温度:20℃~50℃ 60℃以上は生きてゆけない
病原性:弱
特に注意しなければいけないタイプ:抵抗力の少ない高齢者や乳幼児
感染症の種類:レジオネラ肺炎、ポンティアック熱
感染ルート:経気道感染。菌が生息している霧状のお湯を肺へ吸入することで感染
レジオネラ菌というのはなにも入浴施設やプールにだけ生息しているわけではありません。ご覧の通り、自然界での生息地が土壌や河川、沼とごく当たり前に存在する菌です。
そこでちょっと疑問に思うのが「自然界で感染したってあんまり聞いたことがないなぁ」ということです。なぜ入浴施設だけが感染場所として有名なんだ?
そもそも自然界に生息しているレジオネラ菌は菌数が少なく、また増殖速度も一般的な病原細菌に比べると遅いため、普通なら感染症を引き起こすほどの菌数になることはありません。
しかし人工的に管理された入浴施設の循環装置内などはレジオネラ菌が寄生する原虫の増殖に適した温度であるうえに、入浴者の体に付いていた汚れなどから栄養源も補給できるのでベストプレイスになっているのが現状です。
殺菌を徹底していれば感染の可能性はありませんが、少しでも怠ればレジオネラ菌の思うまま。被害が出てしまうのも時間の問題です。
自然界ではまったく感染しないというわけではありませんが、それはただ感染しやすい環境になることが少ないというだけのこと。逆を言えば入浴施設はそれほど感染しやすい環境が揃っているということですね。
感染しやすい環境についてもう少しお話しましょう。
上記にもある通り、本来レジオネラ菌の病原性は低いです。健康な人がただお風呂に入っただけでは感染することはそうありません。
レジオネラ菌は気道を介して感染します。簡単に言えばレジオネラ菌がいるお湯をシャワーに使ったり、うたせ湯に使ったり、ジャグジーなどに使ったりした場合、霧状(エアロゾル)になったそれを吸い込むことによって感染してしまうのです。
自然界の中でエアロゾルって中々起こらないですよね。そういうことです。
だから塩素なのです。とにかく塩素で殺菌する、前回もそういうお話でした。
が、しかし。プロフィール欄になんだか不吉なセリフ。
「バイオフィルムがある限り、オレたちは無敵だぜ」
完全要塞・バイオフィルム
塩素殺菌を条例化させている都道府県も少なくないこのご時世、「衛生管理を徹底する」は施設にとって最低限、当たり前のことです。
実際レジオネラ菌が発生した施設も日頃から塩素殺菌をしていたところがほとんどでしょう。
なら、なぜレジオネラは検出されてしまうのか。その仕組みを解説していきます。
「治安悪くてスミマセン」
名前:バイオフィルム(生物膜)
特徴:ぬるぬるしている、殺菌剤に強い
よくある場所:ろ過装置内や配管内の水の流れが悪い場所
バイオフィルムというものがあります。ろ過装置内などに付着した細菌が細胞外多糖という高分子を分泌して形成した保護膜です。バイオフィルム内にはレジオネラ菌を含めた多数の細菌が混在しています。
それを求めて集まってきたのがアメーバなどの原虫。お腹を空かせたアメーバたちは、細菌を食べる。いっぱい食べる。
レジオネラ菌も食べられますが、ヤツらは他の細菌とは違い取り込まれた先で増殖するという性質を持っているので逆に好都合。アメーバの中に侵入し、元気に増殖。
しかもこのバイオフィルムというのは殺菌剤に強く、外では塩素殺菌剤の攻撃が雨あられに降っているにも関わらず、核シェルター並みの防御力でレジオネラ菌を取り込んだアメーバを守ります。
そうやってバイオフィルム内にいるアメーバの中ですくすく増殖を続けたレジオネラ菌は、やがて宿主であるアメーバを食い殺し、また新たなアメーバに取り付きます。
どんどんレジオネラ菌が増え続け、そしてある日、過密のため巨大化がしたバイオフィルムが破裂。レジオネラ菌が一斉に解き放たれるわけです。
爆破したバイオフィルムと解き放たれる例塩根羅菌(イメージ図)
※画力の問題により空気剃瑠バイク割愛
このとき、浴槽内の有効塩素濃度が低ければどうなるでしょう?
殺菌が追い付かず、人への感染確率が非常に高くなります。例塩根羅が浴槽内を爆走し空気剃瑠バイクに乗って肺に特攻ということです。
バイオフィルムの対処
こんなの勝てっこないじゃないか! と思う人間のみなさん、しかしバイオフィルムとて無敵ではありません。これからバイオフィルムの対処についてお教えします。
- 殺菌の徹底
これをしていれば、配管内やろ過装置内に細菌が付着してもバイオフィルムの形成を阻止できます。
しかし、バイオフィルムの中には殺菌剤に強いものもありますので、悲しいことに普段の殺菌では完全に阻止できません。
- 日頃のこまめな掃除
浴槽がキレイだと問題なく思うでしょうが、注意すべきところはろ過装置の中や配管内。目に付かないところだからこそ温床になりやすいのです。
ヘヤーキャッチャーなど業者に頼まなくても掃除できるところは施設の方でしてしまいましょう。定期的な逆洗洗浄も効果的です。
- 循環水はシャワーやうたせ湯、ジャグジーなどに使わない
感染経路はエアロゾルが間違いなく一番多いです。ウチはならないと思っていると痛い目にあいます。
ユーアイ技研は配管洗浄もオススメしています。
目に見えない配管内はどうしてもキレイになっているか分かりません。バイオフィルムは殺菌剤に強いなら、なおさら心配です。
そんなときはもう業者に頼んで徹底洗浄です。感染者を出さないためにも、年に1回はしておくといいでしょう。
ユーアイ技研が行っている洗浄方法は化学洗浄です。
水を張った浴槽に殺菌剤を投入し、水を循環させることによって配管に溜まっている細菌を殺すといった方法です。
普段使用している塩素などの殺菌剤は入浴者のことを考え濃度が決められていますが、配管洗浄をする際は営業時間外であり高濃度の薬品を使うことができます。
具体的に言うと100PPMの次亜塩素酸ナトリウムで三時間の循環です。これで水が茶色く染まるくらいにスッキリ取れますよ(*^_^*)
薬品で汚れを取り除いたら中和剤を入れます。これは高塩素濃度の水をそのまま排水すると環境に悪いからです。
そして中和された汚水を捨て、浴槽をキレイに清掃。これで美しい浴槽が手に入ります!
文字だけなら簡単そうですが、時間と手間がかかる作業です。安全面にも気を使わないといけないので、ぜひプロを頼っていただきたいです。
日本人の文化ともなっている温泉。気持ちよく使うには施設側の徹底した衛生管理が不可欠です。
ちなみに、掛け流し式の温泉だからといって油断は禁物ですよ!
ろ過循環装置がなかったとしても、レジオネラは検出されます。だってごく当たり前な菌なのですから!
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